港口整形外科

「お前があの世に行ったら、どうしようかと思ったよ。愚痴をこぼす相手がいなくなるからさあ」

玄関で内田を見送ると、さっそく病室で亜鉛のサプリメントを飲んだ。一日二粒までと容器に書いてあるが、四粒飲んだ。なんとなく生えてきそうな気がした。

「これのどこがそっくりさんなんだよ」

夕食後、ベッドでぼやきながら、内田が買ってきたスポーツ新聞の、そっくりさんヌードの記事を見ていると、サッとカーテンが開いた。

次の瞬間、若い小さな看護師が「ごめんなさいっ」と言ってカーテンを閉めた。

「看護師さん? どうしたんですか?」

僕は、ぽかんとなってたずねた。すこしの間があったあと、またカーテンが開き、看護師が顔を出した。

「あの、来見谷さん。来週転院していただくことになりましたので、そのことをお知らせに」

「転院?」

「ええ。音原(ねはら)病院のベッドに空きができたようで」

「ネハラビョウイン?」

「えっと、ここの系列病院です。東京の大田区にあります」

頬を赤く染め、目を逸らしながら、彼女はぎこちなく答えた。