「あ、そうだ。わたくし、聞いてみたいことがあったの。ねえ、おじさん、ゆきさん、あのね、三日前に、警備小屋の横で、五人の囚人さんが横一列に並んで亡くなっていたことがあったでしょう?」
「へ、へえ。あっしが見たわけじゃねえが、お役人が不思議だ不思議だって」
「ふうん。ところ変われば、追悼の儀式も違うのね。わたくしの故郷のレイギッガアでは、尊い亡くなり方をした人が何人かいらしたら、一列に並べて、みんな等しく神様の元にゆけますようにって、お祈りするのよ」
「ま、まあ、そうなんですか。……あの、れ……い……ぎって、どちらあたりの土地の名前ですか?」
おずおずと、ゆきが尋ねた。
「えぇ、まあかなり遠くの。千鶴は何にでも興味を持つ子でね」竜興は片手で千鶴の背中を軽く叩いた。
「まあ、おえらい妹さまですね」
「いやいや。それより千鶴。この男の人は虎太郎くんといって、お相撲さんなんだぞ。四股名(しこな)は『大虎嘯(だいこしょう)』。東十両筆頭で、来場所勝ち越せば、幕内に上がれるはずだったんだ」
「え。お相撲さんなの」千鶴の声が上ずった。
「ふふ。千鶴は大相撲が大好きだものなあ」
言語が同じだと他の分野でも似たところがあるらしいと、銀河系航空宇宙局の局員が語っていたのを竜興は思い出した。レイギッガアでも、大相撲は国技として王族も庶民も夢中になっている。
「いいえ、あっしはもう相撲取りじゃありやせん。師匠にも、他の弟子たちにも、あっしは取りけぇしのつかねえ……」
「ねえ、虎太郎さん。出過ぎたことを言いますけど、もう悔やむのはよしたほうがいいわ」
【前回の記事を読む】「鈴木がよろしいわ、鈴の実る木だなんて、ステキだわ」一行は日本人に化け、地球に不時着することに。