雪
雪が降ってきた
いつもより白く感じる雪の色
白くて白くて
まるで光っているみたい
空を舞う 自由に舞う
光
わたしも雪になりたいと想った
光になって 世界を飛び回りたい
雪が落ちてきた
ふわりと落ちて ふわりとふくらむ
透明の水になった 白い光
忠実に世界を映す 透明
わたしも透明な心がほしい
事実を歪曲せず見つめること
人生で一番の難題を水が解決してくれる
毎年 わたしは雪に憧れる
軽やかで 柔らかで あたたかい
儚い存在に思えるけれど
なによりも 真実をはらんでいる
なによりも 身軽で 幸せに 世界を行きかう
わたしは生まれ変わったら 雪になりたい
空から 世界を見下ろして
最後は水になって 世界の真実を見続けたい
アルバム
――こんにちは!
彼に街角で声をかけられたのは、そう、ちょうど冬の真ん中あたりだった。いそいで彼の横を通り過ぎるわたしの背後で、枯れ葉が舞っていた。背中に、かすかに彼の視線を感じて。わたしは立ち止まる。
春の訪れ。彼とふたりで出かけた。早咲きの桜の木の下で、はらはら舞うきれいな花びらを眺めていた。このきれいな桜の生命のなんて短いこと。一生懸命その生命が存在する意味を考えたけれど、やっぱりわからなかった。
青い空とともにやってくる夏。ぷちぷちはじけるサイダー。瓶をふちどる水滴に見とれていると一日が終わった。夏休みになり、彼とはあまりあっていない。ふたりで撮った写真を指で縁取る。思い出がサイダーのようにはじける。
すこし愁いをおびた秋には、ななめに降り注ぐ西陽がよく似合う。彼はもうわたしのとなりにはいなくて、写真の中で笑っている。毎日おこる暴力的な事件が、西陽とひどくミスマッチで、この世界の不思議を思い知る。
【前回の記事を読む】「神さまの隣」より六篇~小さくても大きくても、現実でも夢でも、言葉になって誰かに届く~