第三章 「林住期」を知る
75歳からは黄金期・収穫期
仕事から完全に引退して、一日24時間すべてが自分のための毎日が始まりました。75歳になり「林住期」を始めるには遅きに失するかもしれません。すぐに「林住期」の後半に到達して、長年夢見てきた「自由な時間」を取り戻すための作業が始まります。
いざその自由な時間をどう過ごすか、一瞬広大な平原の中にポツンと立たされている錯覚を覚えました。360度周りは何も見えません。
「自分はこれからどの方向へ進むのか?」
「その先に自分が求める世界が待っているのか?」
漠然とした希望と同時に、困惑もかすかに感じました。これまでの人生は、会社がやるべきことを与えてくれた。自分で考えなくても仕事があたえられた。毎年、それを繰り返すことが、これまでの人生だった。
「何をしてもいい」し、「何をしなくてもいい」。それがこれからの自分の人生の方向性だと思うと、楽しみと苦悩が相まって複雑な思いが心に忍んでくるような気分です。
これまでに経験をしたことがないことをこれから実践していくのだから、その思いは当然です。コップに半分ある水を見て、「まだ半分残っている」と思うか、「後、半分しかない」と思うかは心の持ちようです。「人生100年時代」とすれば、残りの時間は四分の一かもしれませんが。