次に、負担はみんなで分かち合うとしても、常にフォローできる特定の誰かを決めておく必要があることも全員一致で認めた。
しかし、誰がするのか、という段になれば急にみんなの口は重くなる。ある顔をうかがえばその顔は下を向き、もう一人を見ればそちらも首をふる。そんなやり取りが続いたあと、最後のカードをめくるようにみんなの顔がユーリに集中した。
「俺?」
正直なところ、一番厄介な問題を引き受けるというよりも、カーシャとの付き合いを公認されるという期待が胸をかすめた。それに自分以外の誰がカーシャのことを見てやれるのか、という自負するような気持ちもあった。
「やっぱり、俺しかいないよね……」
あきらめたような照れ笑いの裏にそんな気持ちを隠して、ユーリはみんなの期待に応えた。
「そうか! そうしてくれれば助かるよ」
議長役のサッコがそう評決すると拍手が湧き起こり、集会はお開きになった。
サッコは後ろにいたカーシャのそばに寄り、心配するなと肩に手を置いた。
「お父ちゃんは鐘を売ったの?」
声も表情も変わらないが、その事実はここにいる誰よりもショックだったにちがいない。朝飯を食べたかと聞かれたような顔をして、サッコは「ああ」とうなずいた。
【前回の記事を読む】目が覚めると、父がいない。「お父ちゃん!」声を荒げて探しても、見つかったのは白い封筒だけ。中を開くと父の筆跡があって…
次回更新は11月9日(土)、21時の予定です。