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誰に対しても気さくで冗談ばかりの彼も、この小娘にはちょっと気後れがする。
十二も年下となれば以前は相手にもならなかったが、街から戻った娘は急に大人びて、都会の色に艶めいたところが彼にはなんとも魅力的だ。しかもまだ十八とくれば眩しくさえ感じられる。
そんなエゴルの下心をとっくに見透かしているのか、キーラは生意気な顔でこっちを一瞥(いちべつ)しただけだ。
「気を悪くしないでくれ。バスは定刻に出るけど、八時半以降なら一人だけ車で送ってやることもできるから」
エゴルの言葉を途中まで聞くと、キーラは噛んでいたガムを苦いもののように道に吐き捨て、返事もせずにいってしまった。
―あんなだらしない娘に鼻の下伸ばすんじゃないよ。
エゴルの母親は、キーラがバスに乗るようになってからずっと息子にそう忠告している。母親が、あるいは同性が毛嫌いするようなものを撒き散らしながら歩くこの娘の後ろ姿を見送りながら、エゴルの目はその挑発的な尻に吸い寄せられていく。