そこでもう一度病院を受診してこの病気を治してもらおうという気になった。調べてみると今城病院に新しく膠原病・リウマチ内科が開設されたとのことであったので先日受診したのである。
診察したのは山下真奈美という中年位の女医だった。目がやけに細くて吊り上がっており、江戸時代なら美人ともてはやされたかもしれないが、彼には狐にしか見えなかった。そしてその態度も狐のようにと言ったら狐に申し訳ないくらいつんけんしたものだった。
「検査しましたが、特に異常は見当たりません」
「以前も異常がないと言われました。でもこの症状が八年も続いて外にも行けないんです。一体何の病気でしょうか?」
「慢性疲労症候群かもしれません」
「慢性疲労・・・・・・何ですか?」
「原因不明の疾患です」
「間違いないんですか?」
この質問に女医はカチンと来たようだ。以降は早口になり、語気が荒くなった。
「他に病気が隠れているかもしれないから、全身精査しないと鑑別診断できません」
「全身精査って何をするんですか?」
「頭の検査とか、消化器検査とか、内分泌検査とか色々あるので入院して全身精査してください」
「入院? 入院しないといけないんですか? 外来では検査できないんですか?」
この質問がさらに火に油を注いだ。
「こちらももっと重症の患者さんをたくさん相手にしているので外来で軽症の方の相手をしている時間が無いんです。検査することも多いので、入院して一挙に調べた方が早いです。正確に調べたいんだったらその方がいいです」
そうまくし立てた後はそっぽを向いて看護師と空床状況について話し始めたので、彼はそれ以上、意見を差し挟む隙も無く、七月十八日に入院することになってしまった。せめて個室を要求するのが精一杯だった。
【前回の記事を読む】「歩けるようになるのは難しいでしょうねえ」信号無視で病院に運ばれてきた馬鹿共は、地元の底辺高校時代の同級生だった。
次回更新は11月3日(日)、11時の予定です。