ネムとジド

ネムはふたりがこまっているのをみて、ジドの体をそっとなでて、よだれをたらしながらいった。

「ジド、どんれじょうらい。どうだんも、があだんも、よどごぶがあね」

ジドは立ちあがった。そしてネムがピョーンとさけぶと、庭の小さな木のうえをとびこえ、ピョーン、ピョーンというと、そばの少し高い木のてっぺんまでとびあがった。

しかし、それ以上は、どんなにいっても、とぼうとはしなかった。旦那はがっかりした。体の大きな犬だったら、これぐらいとべるからだ。

「これだけか。フン、やっぱり役立たずだな。こんなのを、おまえたちは、いつまで飼う気だ。さっさとすててしまえ」

それをきいて、父さんがあわてた。

「いえ、この犬は、ほんとうに空を飛べます。私もミレンカも、この目でみたのですから」

「うそではないな。たしかに、チビにしては、高くとぶ。よし、もう少しようすをみよう。もしほんとうに空を飛ぶのなら、あの家に、このまま住んでいてもかまわん。ただし、そうなったら、この犬をわしにゆずれ。もちろん、ただでとはいわんが。いいな」

父さんと母さんは、ほっとして家にかえった。なんといっても、ジドはほんとうに空を飛ぶのだし、それをみせさえすれば、一家はこの家で安心してくらせる。

それにジドを旦那にゆずれば、お金もはいるし、ネムも学校にいかせられる。そうすれば、読み書きもできるようになって、ひとりで生きていけるようになるだろう……と、そう思ったのだ。