それにしても、ネムは、いつ、どうやって、ジドにおしえたのだろう。あんなに不自由な体で、犬におしえるほどになるなんて。どう考えてもわからない。そこで、ふたりはでかけるふりをして、息子と犬のようすをみることにした。

一方、旦那も、ああはいったものの、ジドが木のてっぺんまでとびあがったことを、ふしぎに思っていた。

―あんなチビが、あんなに高くとぶなんて、いったい、どうやって仕込んだのだろう。もしかしたら、ちゃんと訓練すれば、ほんとうに空を飛ぶかもしれない。ともかく、もう一度みてみよう―

そう考えて、やっぱりネムとジドのようすをみることにした。

ネムとジドは、父さんと母さんが家をでると、すぐに林のなかの原っぱにいった。晴れて、風がさわやかな朝だ。

ネムはうれしくなって、いつものようにうたいだした。するとその歌にさそわれて、ハトやカラスやスズメだけでなく、ウサギや、アナグマ、それにキツネや、ノネズミ、リスやトカゲまで、さまざまな動物があつまってきて、ネムとジドをとりかこんだ。

あとをついてきた父さんと母さんは、木のかげでそれをみて、目をうたがった。たしかに、これまでも、ネムがそばにいくと、それまでさわいでいたニワトリもヤギも、よその牛や馬まで、おとなしくなるのは知っていた。

だけど、こんなふうに、動物たちが息子のまわりにあつまって、じっとしているのをみたのは、はじめてだ。

「あの子は、動物の心がわかるのかもしれないね」