ネムとジド
「やら、ジド、ごご」父さんはこまった。
「そんなこと、いわないでおくれよ。旦那のいうとおりにすれば、わしらはこの家にいられるんだから。ジドには、いつだって会えるじゃないか」
だけどネムは首をふり、ジドをしっかりだきしめてはなさない。こんなことは、今まで一度もなかった。
「ジドをわたせば、お金ももらえるし、おまえにおいしいものを、いっぱい食べさせてあげられるんだよ」
母さんがそういっても、やっぱり首をよこにふった。
「やら、いらあい。ジド、ごご」
「お金があれば、学校にいけるのよ」
「アッゴー、いぐ?」
「そうよ、学校にいけば、みんなといっしょにあそべるのよ」
「あおえゆ?」
「そうだよ。まえのように、仲よくあそべるんだよ」父さんのことばに、ネムは考えこんだ。
「ジド いっじょ?」
「そうだよ。ジドもいっしょにあそべるんだよ」
ネムが考えているのをみて、両親はすぐにネムとジドを、旦那の屋敷につれていった。しかし、父さんがジドを旦那にわたそうとすると、ジドはネムにぴったりと体をくっつけ、足をふんばって動こうとしない。むりに引っぱると、歯をむきだして、うなり声をあげ、旦那の手にかみついた。
「ジド、だーべ!」