【前回の記事を読む】3年ぶりに家に帰った。「ごめん、ごめん…」声をあげて泣いた僕を、両親は理由も訊かずに抱きしめてくれた。

第七章

夕食を食べるとき、ここ数日の話をした。遥香の家に行ったこと、そこであったこと、すべてを話した。両親はそれを一言も漏らすまいという表情で、黙って聞いていた。

きっと三年前もこういう話をするべきだったのだろう。なにがあったのか、どうしてこうなったのか、そればかりを問うてくる両親に嫌気が差して、家を飛び出したが、本当に話すべきはそういうことではなくて、僕が遥香の妊娠を経てどう向き合うかを伝えるべきだったんだ。三年もかかってしまったが、意外と単純なことだったのだ。

「お前、変わったな」

僕の話を聞き終えた父は、誇らしげな顔でそう言った。隣で母も強く何度も頷いていた。

「私たちも、ちゃんと向き合えなくてごめんね」

二人が僕に頭を下げる。僕は素直に頭を強く振った。そして、はっとした。もう僕は、自分が悪かったのだと心から思っている。人や環境のせいではなく、自分に責任があったのだとちゃんとわかっているのだ。

両親と和解した僕は、その日、久しぶりに自分が生まれ育った家で眠った。

第八章

「相変わらず、暑いね。あ! 虫!! やだ!」

明里さんが騒ぎ立てる。僕はそれを横目に水を汲んだ。

「ねえ、なんとかしてよ!」

「明里さんが一緒に行きたいって言ったんじゃん」

「そうだけどさー」

白ヶ丘は自然豊かな場所であるだけあって、僕の実家や緑川家がある場所よりも、遥かに虫が多い場所だ。晴天の空の下、虫は元気に活動している。

緑川家を訪れ、実家に帰省した日から、約二週間が経とうとしている。僕が遥香の家であったことを伝えると、明里さんは「よく頑張ったね」と褒めちぎってくれた。流石に、子供が生まれていることには多少の驚きを見せたが、遥香の手紙の内容を伝えると、「私にはまだまだだわ」などと訳のわからないことをぶつぶつと言っていた。

そして、僕が遥香のお墓参りに行こうと思っていると伝えると、明里さんも一緒に行くと言い出して聞かなかった。

「どうして、お墓参りに一緒に行こうと思ったの? 明里さん、部外者なのに」

「優くんの友人代表としてだよ」

虫はもう飛んで行ったのか、振り返るとなんでもない顔で突っ立っていた。