【前回の記事を読む】「私も伝えたいことがある」亡くなった元カノの墓参りに、女友達がどうしても一緒に行くと言って聞かなかった

第八章

「正直私は優くんのことが好きなんだけど、あなたのおかげで脈がないみたいだわ」

「え?」

「なに?」

「いや……、っていうか、遥香に言いたいことってそれ? なんか嫌味みたいじゃない?」

「そんなわけないでしょ? むしろその逆なんですけど」

明里さんはまた不服そうな顔を見せると、ぱっと笑顔に戻った。

「遥香さんには感謝してます。遥香さんのおかげで私は変われました。ずっと我慢していたけど、ようやく口にすることができました。大変だと思うけど、自分のことなので頑張ります」

「なんの話?」

明里さんは、ふふっと微笑むと僕の方を振り返った。

「驚くなよ、少年」

「僕少年って歳じゃないんだけど」

「私、デザインの勉強しようと思って」

「デザイン?」

「そう! お店の内装のデザインとかさ。そういうのを仕事にしようと思って」

「あ」

明里さんのバイト先のカフェで話したときのことが蘇る。

あのとき、明里さんは親が厳しいから銀行に就職すると言っていた。あのときの顔は辛そうだった。

「優くんがね、あまりにももったいなさそうに言うから。やっぱりデザインの仕事したくてさ。

思っているよりも華やかじゃないし、大変な世界なのはわかっているんだけどさ、それでも、あのとき優くんに言われて、私自分の気持ちに蓋してたんだなって、銀行のいいところばっかり探してさ、それで無理やりいいかもって思わせてた。

自分の気持ちに嘘をつくのがしんどくなって、親に言ったんだ。最初は反対されたけど、頭を下げて何度もお願いしたら許してくれた。

遥香さんが育てた優くんの優しい言葉に救われたから、遥香さんに感謝を言いたくて、それで今日連れてきてもらったんだ」

「僕はなにもしてないよ」

「はあ? なに言っちゃってんの? 謙遜するなんてさ、そこは堂々としてなさいよ!」

バンと遥香さんは、僕の背中を叩く。

「遥香さん、優くんを好きになってくれてありがとう。優くんと付き合ってくれてありがとう」

明里さんは、もう一度目を瞑ると、ゆっくり手を合わせて拝んだ。

どう? いい友達でしょ?

僕も明里さんに続いて手を合わせた。