はじめに

十二支霊場寅丑(うしとら)守護・仙台虚空蔵尊では年間、数千組の方々が御祈祷にお越しになられ諸願成就のため切実な想いで御参詣になられます。

そのご縁のあった方々が当山にお越しになられた際には様々なことを感じられると思います。この本には仙台虚空蔵尊という道場で、私が御本尊さまの前で参詣者の皆さまと向き合った時に感じたことや日々の想い、参詣者の皆さまに伝えたいことをまとめさせていただきました。

この本の後半部分では近現代百年の満大寺(だいまんじ)に起きた出来事をありのままに書かせていただきました。令和五年には祖父、大満寺三十世金剛禅貞(こんごうぜんてい)大和尚が大満寺に入山百年という節目を迎えました。

私にとってパーソナルな内容ではありますが、八百六十年以上の歴史がある大満寺にとって近現代をどのように繋いできたのかを知る者が今となっては私しかいない現状を踏まえ、後の者のために私が知る限りのことを記しておきたいと思い、

私が子供の頃より親戚縁者から聞いてきたこと、また私が実際に見てきて感じたことを書き置きさせていただきました。

昨今、当山に御参詣の各々の皆さまが近隣遠方問わず「不退転(ふたいてん)」の覚悟を持ってお越しになられている方が本当に多くこの本のタイトルを「不退転道場(ふたいてんどうじょう)」とさせていただきました。「不退転」という仏教語は政治家の演説等でよく使われる言葉です。

「不退転の覚悟でこの難局を乗り切る所存です」等、自分で決めたことを覆さないこと、信念を持って屈しないことを表す言葉です。仏教語としては文字通り退転しないということ、仏道修行の過程で、すでに得た功徳を決して失うことがないことをいい、仏になることが決定し、揺るがない境地のことです。

寺院とはご縁の中で様々の祈りを捧げ、自分と向き合い、まっすぐな心を養い私たち各々が幸せになることを目指す場所です。仙台虚空蔵尊では皆さまの諸願成就、災厄消除、円満成就を祈願し社会の安寧を願う道場です。

参詣者の皆さまとともに虚空蔵菩薩さまと向き合い手を合わせて御修行いただく時間を過ごすことが私にとって最大の喜びであり、生きている意義でございます。この本を手に取ってくださった皆さまに心から感謝申し上げます。