ただし、広く実践されているか否かはともかく、〈1-1〉で触れたように、合科的学習自体はかなり古くから試みられてきた古典的な考え方といえますから、これまでの限界を克服しようとするとき、また、新しいと思われる STEAM 教育に取り組むとき、実は一旦、デューイ等の教育学の古典に戻って参照しながら教育を見つめ直してみることも有効であるといえます。

筆者はそうした立場から、音や音楽に関わる様々な合科的学習に取り組んできましたが、その一つとして STEAM 教育に着目してきました。

なお、総合的な学習として、すべての教科等ではなく STEAM に関わるものに限定するのは、「あらゆることが含まれていることが望ましい」ということを前提としながらも、「実践的に活動を構成しやすくする」ことを重視したためで、総合的な学習としての趣旨が十分に達成されるという条件は外さないようにします。

STEAM教育を構成する5分野のうち、A(アート)(芸術)は後発のものであり、他の分野に比べると萌芽的な状況です。実践例は発表されていますが、現状では、「(アート)」が「芸術」の中の「美術」を指すことが多いです。これは、工業デザインと関連があると推察されます 注3)

また、A(アート)については、いわゆる「リベラルアーツ」として捉えられるという指摘があります注4)。実際、「リベラルアーツ」いう言葉は、ギリシャ・ローマ時代の文法、修辞学、弁証法、数学、天文学、音楽等といった学問に起源をもつとされています。

しかし、STEAM 教育におけるAについては、国内外ともにその定義は未だ定まっていません注5)(この点については〈2-4〉で後述します)。こういった背景があるものの、 STEAM 教育における A は特定の学問領域に依存しない「資質・能力の育成の手段」としても有効であると考えられます注6)

さらに、STEAM 教育では、問題解決を試行錯誤しながら行う学習形態が重視されており、筆者はこのプロセスに着目することで、「未知な状況や変転する状況」において、子どもたちが身に付けた知識を適用する場面を生み出すことができると考えます。