「ぼ、僕も川原さんのことが大好きです。頑張ってこられたのも川原さんが側にいてくれるからなんです。ぼ、僕と結婚して下さい」

飛び抜けた話を川原に投げつけた。

「お、おい。山沖、話がホップ・ステップ・ジャンプじゃなくて、それじゃいきなりジャンプだ。川原だって困るぞ。まずはおつき合いから始めろ」

 山沖の言葉に驚いて、俺は空になった牛乳パックを握りつぶしていた。突き刺したストローの先からは残った白い液体が飛び出した。プシュッという音の後に描かれた放物線を見ながら祝砲だなと思った。

第三章 専務の背任と常務の登場

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ドタバタと不慣れな透視力を使って、社内の人間関係のトラブルに対処しているうちに季節は春に移り変わっていた。神仙老人と会う機会を作ることもなく日は過ぎていた。

花見の帰りに久し振りに神社の境内に入り込んでいた。懐かしい石段は変わることなく古びたままで端の方はこけが張りついている。一段、二段と下りていき、中段のところで腰を下ろした。石段を照らす頼りない街灯の光が、十二月には気がつかなかった桜を浮かび上がらせている。

桜は石段に沿って両側に植えられていて、季節を忘れることなく花を開かせていた。酔った目には淡いピンクのかすみが漂っているように見える。

神仙老人の見ている世界、住んでいる世界はこんな桃源郷のようなところなのかなとぼんやり考えていた。

(ふぉふぉふぉ……)

聞き覚えのある低い声が耳に響いてきた。

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