第二章 怒れる上司と見守るアシスタント

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田所はソファーにもたれかかって腕組みをしている。念のため、もう一度透視をしてみた。まだ上座に座る殿様が憑いている。続けるのは今だと思って言葉をつけ足した。

「課長、今日お待ち申し上げて一番言いたかったのは、尊敬する課長の名に傷がつくのを事前に防ぎたかったからなんです。それには、是非、課長の器の大きさを周囲に見せつけてほしいんです。

例えば、殿様が『良きに計らえ。後は私が引き受けよう。皆の者、安心せい』といった具合に、度量の深さを示されるなら、課長の名声は上がると思います。いかがでしょうか、今回の一件を通して、課長の名を上げられては」

ここまで話せるようになってくると犯罪に近いのではないかと思ってしまう。しかし、えさに食らいついた魚のように田所は反応を示してきた。

「ほう、それは初耳だったな。それに俺のことを尊敬しているだなんて、君も口が上手だね。それで、俺にどうしろと言うんだ?」 

「はい、私も探りを入れておきました。発注ミスの件の対処策としては、山沖がおぜん立てをしているようです。山沖を立てて先陣を切らせ、課長が工場の生産管理部長と得意先の部課長に頭を下げるということで一件落着させれば、よろしいかと」

心の中で「ふ~」とため息をついた。

両手は汗でベトベトになっているし、両足は小刻みに震えていた。

「松岡君、良い情報をくれてありがとう。実は、私も頭に血が上ってしまっていてね、善後策をまだ考えていなかったんだよ。君の心の籠もったアドバイスに感謝するよ。それじゃ」