かなりあとになって相談にいった社会保険労務士の人が、不当解雇で訴えれば、少なくても一か月分は給料をもらえたと教えてくれた。だからあの会社は、若くて無知な未成年を進んで雇用していたのだ。

その後、何か月間か置いてくれた男たちは、ボスが以前薬剤開発の仕事をしていて、危険ドラッグの密輸に手を染めていた。それでお金になると踏んだので、人体実験を始めた。

インターネットで多額の謝礼を匂わせれば、それに釣られて女性はいくらでも付いてきた。

その女性を薬漬けにして、金品を搾取していたのだ。そんな事件に巻き込まれてしまったのは、ひとえに私がいかになにも考えていなかったかということである。

死者が出なかったのがまだしも救いで、大きなニュースにはならなかった。のちに私がお世話になった弁護士に調べてもらったところ、あのとき警察が動いて、捕まっていた女性は皆救出されたそうで、それを知って安堵している。

あのとき、逃げるきっかけをくれた「ともえ」という女性は、大した度胸を持った女性だと、感心した記憶が今でも鮮明に残っている。

絶対にここで命を落としてなるものかという、強い思いがあれば、人はどんな状況からでも脱出できるということを、身をもって私に教えてくれた。

結果的に私も加担したことは事実なので、二度とこのようなことのないようにと、反省するとともにあのときの恐怖を忘れないと胸に誓った。

この事件については、私の余罪を追及されたときに、警察と国選弁護人に全部話した。