その折、しっかり本物を見る目を養うように、取り調べ官に言われた。
そして、その後勤めた「なんでも便利センター」。ここで私は詐欺を働き、警察のご厄介になることになる。
なかでもいちばん多額のお金を騙し取ってしまった、木村のおばあちゃんには、とても済まない気持ちを持ち続けている。私は、あんな年寄りを何人も騙してきた。
親が自分の理想を押しつけたせいで、息子や娘が何年も顔を見せない家が多かった。そんな家では、親のどちらかが死んで一人暮らしになっても、子どもに対しては頑固になってしまうのだ。
息子夫婦や娘夫婦も自分たちの生活で手一杯で、なかなか親に会いにくる余裕がない。それが長年の習慣になると、その状態に慣れてしまい、親の言う「大丈夫」を額面どおりに受け取る。
親はいつの間にか自然に臨終を迎えると思っている子どもは多いだろう。その結果、実家から足が遠のき、お盆も正月も帰ってこない。
年寄りのさみしさにつけ入るのは、とてもたやすい作業なのである。彼らが喜びそうなことを言うと、おもしろいように高齢者は私に騙された。女性も男性もである。
【前回の記事を読む】16歳の夏、母が脳梗塞で突然死んだ。未成年のうちから、両親がいなくなり路頭に迷ってしまった。なぜこうなってしまったのだろう…
次回更新は7月31日(水)、20時の予定です。
【イチオシ記事】「気がつくべきだった」アプリで知り合った男を信じた結果…
【注目記事】四十歳を過ぎてもマイホームも持たない団地妻になっているとは思わなかった…想像していたのは左ハンドルの高級車に乗って名門小学校に子供を送り迎えしている自分だった