アイザックは、ソファに座ったまま、ザクスカをクチャクチャと頬張って、グラスのウォッカをグイッとあおっていた。ムスッとした顔で部屋の真ん中あたりに視線を向けたままだった。
「くだらねえ」
うなるような低い声が部屋中に響き渡った。
地響きのするような声だ。
エドゥゲーフは、アイザックの顔に目を向けた。
「うるさい! お前は黙って、そのままエサでも食ってろ! この食い気魔神が!! ついでにソファやテーブルまで食っちまったらどうだ?」
ニコライは、水の入ったグラスを雪舟に渡した。
「すまん」
雪舟は、そのまま、ガラステーブルの方に向かった。
「それで、ニコライ、今日は何の用事なんだ? 何か耳寄りな情報でもあるのか?」
雪舟は、ガラステーブルを挟んでいる四人掛けソファの片方、入口側の方の真ん中に、ドカッと腰を下ろした。
「そうなんだ。今日は、だいじな話がある」
ニコライは、ガラスのソファテーブルを挟む、雪舟と反対側、窓側の壁面に背を向けた四人掛けソファの真ん中に腰を下ろした。そして、雪舟の顔を見た。
「昨日、広島に原爆が落ちた」
部屋の空気が一瞬にして張り詰めた。そして、雪舟、エドゥゲーフ、アイザックの目が、一気に鋭くなり、表情が険しくなった。エドゥゲーフは、ニコライに目を向けたまま、雑誌を閉じた。
【前回の記事を読む】一瞬でもときめいたことが悔しい!終始こちらを馬鹿にしてきた男に憤りながら、一方で悲しげな瞳が気にかかった…。