「これはこれは雲人(くもびと)様。よくぞおいでくださいました。この辺りは、もう何週間も日照り続きです。このままでは丹精込めた農作物たちも枯れ果ててしまいます。どうか、どうか、恵みの雨をお与えください」

「なるほど、そうでありましたか」

調査官は頷きながらポンと雲をたたき、再び高度を上げ辺りを見渡した。すると干からびた地面はひび割れ、草花たちは生気を失ったようにうなだれている様子が見て取れた。確かにどこもかしこも枯れ果てる寸前である。

「事態は把握致しました。早急に対応しますので、今しばらくお待ちください」

調査官はそう言うと、再びポンと雲をたたいた。そして手を擦り合わせ続ける人々に見送られながら、天へと消えていった。

「これは忙しくなるぞ……」

ポツリとつぶやきながら、まず向かったのは雲製造工場だ。工場長は調査官の顔を見るなり、あからさまに表情を曇らせた。

「なんだい、またかい? こっちも毎日フル稼働なんだよ。勘弁してほしいなぁ……」

「そうですよね……それは重々承知の上なのですがね……」

調査官は持ち合わせている言葉を巧みに使い工場長を説得し、雲の特別発注を受けてもらうことに成功した。

ふぅ……とため息が漏れる。しかし、息つく暇はないのだ。調査官はすぐに次の目的地である配達店舗へと向かう。

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