雨乞い

調査官は雲廃棄専用のゴミ袋を取り出し、せっせと袋に詰め始める。皆で協力しても数時間はかかる、なかなかの重労働である。

何とか在庫整理を終えた頃には、もうくたくただった。しかし、休んではいられない。そろそろ発注した雲ができている頃合いだ。再び工場へと戻る。

到着すると、ちょうどでき上がった雲が別室へと運ばれているところであった。本来なら、そのまま各配達店舗に仕分けされるのだが、なんせ今回は雨乞い案件なのだ。支店に回していては時間ばかりがかかってしまう。雨降らし地域への直通列車を作る必要があるのだ。

雲で列車を作るのは、普段から雲を操っている雲人にとっても手のかかる作業だ。熟練工などもかき集められ、手作業で大きな大きな特急列車を作る。急ピッチでの作業と共に、行き先を間違わぬよう細心の注意を払う必要がある。

「さぁ、もう一踏ん張りです。皆さん、頑張りましょう!」

調査官は作業員たちを力強く励まし続ける。こうして、日付が変わるか変わらないかのタイミングでようやく列車は完成した。パーンと景気のよい音を響かせ動きだし、見送る現場は拍手喝采に包まれた。

夜明けと共に列車は目的地に到着し、無事に雨が降り始めた。

「ありがたや、ありがたや。雲人様からの恵みの雨じゃ」

人々は天に手を合わせ、大喜びし救われましたとさ。めでたし、めでたし。

これは遠い遠い昔の話です。

雲人と人間の交流が途絶えて久しく、もはや知っている人などおりません。

なぜって……。そりゃぁ、そうでしょう。人間の身勝手さといったら、目も当てられません。自然破壊に環境汚染で、雲人たちの世界にも多大な影響を与えてきたのです。

哀れな人間たちは天気を予報し、わかった気になっていますが、決して忘れてはなりません。私たち人間は、雲人たちの手のひらの上で踊らされているということを……。

だるまさん

「ねぇ、知ってる? この学校の七不思議。誰もいなくなった六年生のクラスの前の長廊下で、だるまさんが転んだをやると、本当にだるまさんが出てくるんだって。大きなだるまさん……」

「えっ、なにそれ! こわーい!」

モモは笑いながら怖がってみせた。しかし、内心は違った。来週発行予定のクラス新聞のネタを探していたのだ。皆が書いているような平凡な内容ではなく、あっと驚くような斬新な記事を書きたいと思っていたモモは、面白いネタになりそうだと胸をワクワクさせた。