だるまさん

だが、このままというわけにはいかない。再び深呼吸をし、せーので後ろを振り返る。意を決して向いた先に広がったのは、しーんと静まり返ったまっすぐ続く暗い廊下であった。

だるまさんが出てくるなんて、ただの噂話に過ぎなかったのだと、モモは安堵のため息をつく。同時に指先からポカポカと暖かくなる感覚が体を駆け巡った。

緊張の糸がほどけてモモは再び顔を伏せる。せっかくだからもう一回ぐらい言っておこうと思ったのだ。

「だーるまさんが、こーろんだ!」

先ほどよりも大きな声で、そして軽快に唱え、勢いよく振り返る。

すると、今度はどうだろう……。遠くの方に、大きな丸っこい影が見えるのだ。一瞬にして血の気が引いていくのがわかった。