不動産相談所
善は急げ。早速新たな物件をいくつか紹介してもらい、そのうちの一つを気に入った。前回のように新しい建物ではないが、なかなかよさそうな物件である。
事前に確認した相手の好みを参考に、身なりを整えて迎えた見学当日。失礼のないよう、そして少しでもいい印象を与えられるように細心の注意を払う。前回と比べるとランクはやや下がった感じはあるものの、気になる欠点も見受けられず、よい物件だった。
俺は最後の最後まで気を抜かないように努めた。丁寧になるべく音を立てぬよう、慎重に扉を閉める。ここでようやく一息だ。
「お疲れ様でございました。今回の物件はいかがでしたでしょうか」
「うん、なかなかよかった。ぜひ話を進めてもらいたい」
「かしこまりました。それでは先方のお気持ちを確認し、改めてご連絡致します」
翌日、相談所から電話が鳴った。
「昨日もご見学いただきありがとうございました。先方のお気持ちですが、今回も残念なことに……」
結果は、またしてもお断りであった。理由を聞いても、のらりくらりと話をそらし、的を射た回答を返してくれない。納得しない俺に、相談員はこんな提案をしてきた。
「少し条件を緩めてお探しになるのはいかがでしょうか」