当たる

毎朝、家の近くの自動販売機でエナジードリンクを一本購入する。それが彼の日課だ。ガシャンと落ちてきたビンを取り、上着のポケットに入れ、スタスタと駅へと向かう。電車が到着するまでの待ち時間はおよそ五分、その間にポケットに入れておいたエナジードリンクを飲むのだ。

彼の日常は代わり映えのしない毎日だったが、とくに不満もなく平穏であった。

ある日の月曜日、いつものようにエナジードリンクを購入し、取り出すために腰をかがめた時、耳元でピピピピと音がした。

見ると小銭投入口の左横に液晶画面があり、三桁の数字が目まぐるしく形を変えて回転している。そのうち数字が揃い、ピコーンピコーンと騒がしい音が鳴り響いた。当たりのようだ。

ドリンクのボタンが再び点灯したのを見て、缶コーヒーのボタンを押すと、ガシャンと勢いよく落ちてきた。今日はついてるなと得した気分で一瞬心が踊ったが、こんな機能あっただろうか……と疑問も芽生える。しかし、嬉しいことに変わりはない。

彼は追加で出てきた缶コーヒーを鞄のポケットに入れ、駅へと向かった。そして、エナジードリンクを飲みながら電車を待つ。ささやかではあるが小さな幸運に、いくらか普段よりも美味しく感じた。

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次回更新は9月3日(火)、18時の予定です。

 

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