紫陽花の季節
紫陽花が咲く季節になりましたね
懐かしい声がして振り向くと
そこにはあなたがいた
ほほ笑むあなたがいた
瞬間で記憶が蘇るのをごまかすために
軽く咳ばらいをしてほほ笑み返した
同じ目線でほほ笑み返した
すべてを忘れられたらどんなにいいかと
それが幸せへの近道だと思っていたけれど
その願いはかなえられないまま
耳にのこるあなたの声を
ただただきいていた
あなたの瞳の奥であなたの声を反芻する
記憶にとらわれないよう力をこめて
互いの瞳を見つめて静かに時間がすぎてゆく
ふたりの周りを紫陽花が囲んでいた
【前回の記事を読む】【詩】「十二の月、十二の季節」より(五月・皐月)きらきらした陽射しのやわらかさ 空を泳ぐ鯉のように 自由に生きてね