不揃いな心

部屋の隅に座るのが 好き

壁と壁が重なる 角に座るのが 好き

床から1メートル上にある 窓

からみえる 色づいた外の世界への憧れ

わたしはもう10年間もこの部屋にいて

わたしを見張る3人の大人たちに囲まれて

時を忘れた 季節を忘れた 年を忘れた

世界から 忘れられた

でも覚えている 初めてこの部屋に入ったのは 春

窓から 春らしい暖かい陽がふりそそいで

やっぱり春らしい うぐいすと椿がみえた

昔のわたしは 抵抗して混乱して葛藤して苦しくて

噛みついた 吠えた 泣いた 怯えた

でもそれももう すっかり

過去の話

お気に入りの部屋の隅で わたしは待つ

もう一度 春の陽射しがわたしを温めてくれる日を

永遠に思える時間の中で

たんぽぽの涙

かわいい かわいい たんぽぽの花

きれいな きれいな 黄色の花

太陽のパワーを たっぷり吸って

そよそよと風にゆられながら

そのパワーを わたしにわけてくれる

やさしい やさしい 春のお花

そんな たんぽぽの花を

道ゆく人々は 見つけられるのかしら

気づくのかしら 足を止めるかしら

パワーをわけてくれる たんぽぽの花

のやさしさを 大切にするのかしら

答えはきっと 誰もが知っている

さみし気な たんぽぽの花が

今日も ゆれている

そよそよとゆれている

わたしは やさしいたんぽぽの花の

涙に 気づかないふりをして

もらったパワーを そっとおくりかえした