かたつむりの足跡

ふと 眼で追いかけた 一筋の光

瞳で愛でた かたつむりの足跡

銀色で まばゆくて はかなくて

消えてしまいそうだ と思った

けれど 確かな痕跡を 確かな自分を

葉っぱに刻みこむ

健気だと みんなは 笑うのだろうか

やがて 空から 雨が降ってきて

かたつむりの足跡は 消えてしまった

端から端まで 溶けるように

葉っぱを守って かわりに 姿を消した

かたつむり は そのことを知らないまま

今もなお ゆっくりと 歩をすすめる

雨があがり 日が差しかかる

誰が 笑うのだろう 誰が気づくのだろう

こんな小さな話に 誰が耳を傾けるのだろう

わたしは 最後のひとりでありたいと 願っている

竜宮城

橋から身を乗り出して 川の水面をのぞき込むと

きらきらした水が 朝の光に輝いてみえた

魚の背びれが ゆらゆら 反射して

わたしを乗せて どこまでも 連れていってくれる

魚にまたがった わたしが目指すのは

水をたどった果てにあるのは 何色の世界なのだろう

きらきらした水 に囲まれた 優しい場所

を想像して 目を閉じる 魚に身をゆだねて

わたしは その時がくるのを 待つ

頬をなでる水 の 冷たさに 身震いをしながら

わたしは今日も 待っている

わたしは今日も わたしの竜宮城を 夢見て生きている