気になっていた男の子も、ふるさとに帰るという。私は就職も決まらないまま、鹿児島に帰ることにした。
しかし、その前にチャレンジしたいことがあった。イラストの原稿持ち込みである。私はどちらかというと多趣味で、絵を描くことも好きだった。といっても、少女漫画のイラストのようなものである。
大学のときも、近くの小さな文具屋で、インクやペン、紙を買ってはせっせと描くのを趣味にしていた。
持ち込むならどこにしよう、○○文庫とかのイラストはどうだろう。そう決めてから、毎晩夜遅くまで絵を描き、滅多にしない彩色もして、数枚の絵を仕上げた。私は、持ち込みのアポを取ろうと、有名出版社S社に電話をかけた。
「もしもし……、あの、イラストの原稿を持ち込みしたいのですが……、○○文庫の」
「うちはSC社です」
「え」
なんと、私は間違えてS社のライバル社? のSC社に電話をかけていた。
「す、すみません、間違えました」
冷や汗をかきながら、その後どのようにS社に電話をかけ直してアポをとったのかは覚えていない。
しかしその後、私は、本当にS社の編集室に絵を持ち込んでいた。
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