結婚、そして屋久島へ
梅雨の合間の曇った六月の日、私たちは、式を挙げた。
式には、大勢の方が祝福に来てくれて、賑やかに執り行われた。
私は、友人代表挨拶を高校時代の同級生、かおるちゃんにお願いした。聖飢魔Ⅱファンの友人だ。
かおるちゃんは、「いやあ、里子さんと結婚できるのは、マタギか、野武士くらいのもんだと思っていたので……。思ったより普通の人で、安心しましたー」とスピーチして、会場を沸かせた。私は思わず、「マタギなんて言っても、誰も分からないよー!」
と苦笑い。だいたい私は、なるならマタギの嫁ではなくて、マタギそのものになりたいんだから。
他にも、私の職場の先輩方が夫のところに来て、お酌をしながら次々に夫に言った。
「この人、小人のこととか言うでしょ?」
「里子ちゃんはね、少女なの! チョウがふわふわ飛んでるの!」
「妹をお嫁に出す気持ちだよ」
話しかけられるたびに夫は爆笑し、
「君、職場でも小人のこと言ってたの?」と肩を揺らした。
「ハハ……」
涙と笑いに包まれた、幸せな結婚式だった。
結婚後、我々夫婦は私の実家の隣町にあるアパートに住んだ。
しかし、二人での新婚生活は長くは続かなかった。
母が、転倒して足の骨を折ったのである。