四 相対化の正体
―学校相対化の中で生徒をどう理解するか―
社会の相対化現象は、これまで絶対的に正しいと考えられてきた価値を、最終的に選択肢の一つにしてしまう。
ただ、人々の価値観が多様化することによって、さまざまな価値を互いに認め合えるようになる。悪いことではない。
学校にはそうした多種多様な価値を「それもいいな」「あれもいいね」と認め合える社会の空気を吸って育った子どもたちが集まっている。彼らがこれまで吸ってきた空気は、社会の先っぽに流れる最も新鮮な空気だ。
大人たちが吸ってきた空気と同じとは限らない。同じ社会に生きてはいても、持っている選択肢の数や内容は大人とはまったく違うということだ。
生徒にしっかりと寄り添うためには、個々の生徒の独立した人格を認めると同時に、一人ひとりがそれぞれに社会の多様化の体現者であることを受け入れる姿勢が必要である。
(1)生徒を理解するとは
多様化の体現者である生徒を理解するにはどうすればいいか。それを考えるためには、まず、人が人を理解するとはどういうことかを考えておく必要がある。それは、教員が生徒を理解するために必要な根本を示してくれるだろう。
昔から生徒指導は、「生徒理解に始まり生徒理解に終わる」と言われてきた。生徒がわからないと、どんな指導をしても効果が上がらないからだ。しかし、生徒理解とは何かについては、文部科学省ですら明確な定義を示していない。