第二章 おがさわら紹介
三 小笠原のお酒
なお、小笠原には、村おこしの一環として母島で製造されている「ラム酒」がありますが、値段が少々高い。また、飲み慣れていないということもあって、島で飲んでいる人を見掛けることは稀です。
しかし、土産には物珍しさもあって、いの一番に推薦させて頂きます。贈られた方の感想「ほー小笠原で造っているの!」という驚きの声を聞くのも楽しいものです。結構、話がはずんだりします。
ラム酒は、小笠原最初の定住者であったナサリエル・セーボレーたちが、十九世紀前半捕鯨船の全盛を極めた時代、寄港船への取引物として提供していたとの記録があります。
島の居酒屋でバーボン以外にもラム酒を注文し、その入ったコップを掲げ、そして眺めつつ、一九〇年前に想いを馳せながら、おがさわらの旅を語り合うのも、良き想い出となって宜しいのではないでしょうか。
推薦しておいて申し訳ありませんが、赴任中ラム酒は「独特の味と匂いで、どうも!」という状況であったことは確かです。
さて、東京・竹芝桟橋から遠く一〇〇〇kmの彼方にある小笠原、ある人は家族と離れて、またある人は恋人と別れて(?)人によっては、望郷の寂しさからワイワイガヤガヤと騒がしい都会の懐かしさを想って、一人静かにしんみりとグラスを傾ける、人それぞれです。
健康にはくれぐれも留意して、長ーく! お酒とは付き合っていきたいものです。
四 田折家総括録
大塚は、仕事の関係以外の休暇等で母島を訪れる際、母島唯一の集落である元地地区に多くの民宿が点在する中、立場上何処とは特定せずに色々な宿にお世話になっていました。
その一つに、現在、小笠原絶滅危惧種の鳥類となっている「オガサワラマシコ」を冠した民宿「マシコ」があります。
この宿は、明治十二(一八七九)年九月に現在の田折直喜郎さんの三代前である田折幸太郎さんが八丈島から母島に移住して開拓を始めた由緒ある家系の宿で、宿泊させて頂いた建物は母屋ではなく別棟となっており、直喜郎さんの奥さんが食事時にはその賄をしてくれ、のんびりとした静かな憩いの一時を過ごせる宿となっています。
幾度か支庁赴任中は、宿泊させて頂くなどお世話になったのですが、その宿は沖港桟橋から眺めて集落の左奥、高台に位置し、宿の周りの一面は島レモン畑となって、花の時期にはレモンの香りが爽やかな海風に漂う最高の宿となっています。