山間の街で育ち、港街はあまり散策したことはない。遠い昔、学生のころ関東への修学旅行で横浜港や神戸港に行った記憶があるが、当時は船について興味もなかった。

「どのような船に乗っているのですか?」

「白いスマートな船ですよ」

「船の名前はなんていうのですか?」

「『あきづ』といいます」

和歌山県なのか。みかんと梅干しの里とよくきくが梅干しの里の名前なのかしら。

たぶんそうなのかな。

「あの南部梅林や秋津梅林はよくきくのですが、その名前ですか?」

「そのとおりですよ」

そうか『秋津』という地名はよく記憶に残っていた。この男をもっと知ることはできないのか、どのような男性なのだろうか、もっとお話しできることはできないのか。

質問が次にはでなかった。なにをきこうかと思っていたときにその男から反対にきかれた。

「自転車で今治まで行きたいんですが、時間はどれくらいかかりますか?」

「今治まで自転車で行くのですか? 大変ですね」

「しまなみ海道を走って行こうと思うんですが?」

「そうですか、大変ですね。ここからだとあと四時間程度はかかるんじゃないですか」

「四時間かかるのですか?」

「たぶんそれくらいと思いますよ」

「四時間もかかるのか……」

 

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