古谷タケル、それがこの男の名前だった。まったく聞いたこともなかった。もっと近寄りたい、触れたいと思った。看護師に許可をもらいガラスのドアの中に入った。「ごめん、こんな苦しい思いをさせて」武史はつぶやきながら、そっとタケルの人差し指に触れた。柔らかいその指はまるで女性のようだった。白くて細い、節くれのない長い指は自分の物とほぼ同じものだった。爪の形まで同じ。なんてことだ。切り方にも二十数年分の癖が…
小説
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