紅茶は発明品? それとも偶然の産物?
「ボヒー起源説」は、中国福建省北部の「武夷山」に由来する発酵茶ボヒー(Bohea 武夷)が、紅茶の始まりに相当するものとしてあげられる説だ。
加えて、中国での紅茶の発祥と現地で公言されている「正山小種起源説」もある。崇高な武夷山をして、お茶の唯一正当な山として認め、「正山」と称し、これまた正当な烏龍茶品種である小葉種の「小種」をつなげた正山小種(別名 ラプサンスーチョン)こそが、紅茶の始まりであるとの説が伝えられている。
産地が武夷山なので、前述のボヒーともつながる話である。
「カングー茶起源説」は、手間暇をかけて作ったという意味の手作り紅茶カングー(Congou 工夫)が、その後にインドやセイロンで19世紀以降に大々的に作られるようになる前の中国での紅茶の前身として数えられてもいる。
こんなにもいろいろな説が出てくることは、紅茶を愛するお歴々の議論の産物なのだろう。
角山栄氏の名著『茶の世界史』によれば、イギリス東インド会社による紅茶、緑茶の18世紀の輸入統計に、英国への輸入茶の中で紅茶の割合がどんどん増えていく流れが数値として示されている。
1720年代には、ボヒーを中心とする紅茶の比率が45%程であったが、1730年代、40年代と年を追うごとに増え1750年代には、66%程迄になってきている。