紅茶は発明品? それとも偶然の産物?

ティー、コーヒー、ココアは世界三大嗜好飲料といわれる。そしてティーに関して言えば、地球上で水に次いでたくさん飲まれている飲み物が、ティー、即ち紅茶である。最新のデータで、お茶全体の生産量のなんと50%以上は紅茶である。

こんなメジャーな飲み物である紅茶の発明者は、いったい誰なのだろう?

紅茶の起源や発明に関しては、先人によってたくさんの説が披露されてきた。

茶の生葉を傷つけて放置しておくと緑色から茶褐色に変化する現象が起きる。

この現象を知った誰かが、緑茶を作るのと同じ生の茶葉から、色も味も異なる紅茶が、できてくることを偶然に、思いついたのかもしれない。

のちに解明されたことだが、生葉中にある酵素の力で茶ポリフェノールが酸化発酵されて紅茶特有のポリフェノールになってくることを自然現象としてとらえたこと、つまり紅茶誕生のトリガーとなる第一の発見が起きたのだろう。

紅茶誕生の起源については、すでに諸説が存在している。一つずつ順にご紹介しよう。どれが事実か?

日本紅茶協会のティーインストラクター養成研修でも紅茶の起源については、講義で取り上げられている。

其の一は、17~18世紀頃に中国で船に積まれた茶が、イギリスに向けてのインド洋上での航海中に、発酵が進み偶然紅茶が出来上がった、というと妙にロマンを感じるが、これがいわゆる「船上発酵説」である。

ホント? これって噓っぽくない?

この説は尤もらしいので最初は「なるほど」と信じてしまうかもしれないが、いわば後付けの作り話であるというのが定説。

ダージリン紅茶(セカンドフラッシュ)の項で述べたように、紅茶作りの発酵プロセスは、リンゴの切り口が赤くなるのと同様のポリフェノールオキシダーゼという酵素による反応だから、一度熱で乾燥させられた緑茶には肝心の酵素活性は乏しく、仮に航海中の船上で、海水の飛沫(しぶき)の水分が与えられたとしても、茶園の製茶工場のようには、うまくは行くまい。

続いて、紅茶は、偶然の産物だったものが、東西交易の流れに乗って、海の向こうで人気になったという見方も存在する。

17世紀ごろに初めて本来の緑茶としては価値の低い、いわば出来損ないのくず茶が、中国人から茶貿易を担うオランダ商人達に売り渡された。そして、中国から英国をはじめとする欧州に運ばれていったことが始まりらしい。

名付けて「出来損ない緑茶説」。

その結果、中国人にとっては下級品の外観が黒いいわゆるBLACK TEAが、欧州ではむしろ好まれるという意外な結果を招いた。

まるで瓢箪から駒が出たような話だが、この説は、熱心な研究者の史実調査を経て明らかとなっており、信ぴょう性が高い。