終身雇用制度をめぐる誤解と問題点
終身雇用制度、つまり高校なり大学を卒業し会社に就職し、定年退職まで勤め上げるというこの制度は、崩壊しつつある。その一方で、いまだに多くの人ができれば終身雇用が望ましいと考えている。
だが、この制度というか慣習については誤解されている面も大きいのだが、別に日本古来のものではない。そうした誤解もあってか、たとえば中国などに進出した企業の方からの嘆きをよく聞く。「彼らは、ほかの会社が高い給与を出すとすぐにそっちに行ってしまう」というものだ。
だが、戦前の日本も同じだった。当時の熟練工などはさかんに転職していたと言われる。
「終身雇用制度」が広くいきわたったのは戦後の高度経済成長期のことであり、昭和時代の終わり頃までは人口構造などの要因が重なって、奇跡的にこれがうまく機能しただけのことである。
私自身がこの時代に育ったが、子どもから見ても、いまのように大人の労働・雇用環境が厳しく悲しいといった印象やニュースの記憶はなく、むしろ世の中が安定していた記憶のほうが強く郷愁を誘われるが、平成時代の停滞を考えるとき、この制度は平成時代には実はもう時代遅れだったと言わざるを得ない。
それでは、いったい「終身雇用制度」のどこが問題で、時代遅れものになったのか。私は大きく分けて三つの問題があると考えている。
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問題点1:人生で一度だけしかチャンスがないこと
問題点2:会社内で同じような社員が多くなってしまうこと
問題点3:働き方がロボットのような硬直的なものになること
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そこで、ここでは一つ目の問題点である、職場を選ぶチャンスが実質的には人生で一度だけ、ということについて見ていきたい。これはよく考えればきわめて冷酷だ。