日本はいつまで先進国でいられるか?

日本が明治維新から100年あまりで先進国になれたのは、江戸時代までの蓄積もあるが、何といっても明治時代の先人が「ベンチャー」を手がけ、一気に新しい西洋のモノを取り入れたおかげだ。

ところで、2024年からお札の肖像が変わる。その新しい一万円札の顔で、今年(令和3年〈2021〉)のNHK大河ドラマの主人公の渋沢栄一は、まさに「ベンチャー」の先駆者だ。みずほ銀行、東京海上日動火災保険、東急、帝国ホテルなど、いまの日本経済を担う大企業のもととなる会社を500以上も立ち上げた人だ。

また、日本一有名な鉄道路線と言えば東京の山手線が筆頭にあがるだろうが、この路線ももとを正せば鉄道の将来性を見越し、皆でお金を出し合ってできた「日本鉄道」という会社が始まりだ。

いまでこそ鉄道は不可欠だとわかっているが、当時は日本で上手くいく保証もないわけだから、それにお金を出した先人たちは「ベンチャー」精神と先見の明とを持っていた。

だが残念ながら、いまの日本は「ベンチャー企業」という言葉を変だと思わない国になってしまった。

もう20年以上前になるが、共産主義が崩壊し資本主義に移行したばかりの国に行ったことがある。共産主義独特のどんよりとした、よどんだ雰囲気がまだ残っていて、数日間旅行しているだけで気持ちが暗くなった。

いまの日本には、このときと同じ空気を感じるとき、場所がある。空気感や雰囲気だけは人間の直感なので数値化しようがなく言葉で伝えるしかないが、あえて言えば「元気がない」、「やってもやらなくても変わらない」、「いまのままでいい」の中間のような雰囲気だ。

こうしたことは残念でならないし、こういう国になってしまったのは別に政治家が悪いわけではなく、私のように長く生きてきた人間は皆、過去に思いをめぐらすべきだと考える。特に私より年長の50歳代以上の方は当然こうした変化に気づいているはずだが、その割にいまのこうしたよどんだ空気に警鐘を鳴らす人がいないのは残念でならない。

そして、このままいまのように「ベンチャー」を避け、現状維持の安全志向だけが続くと、日本は先進国ではなくなってしまうのではと心配している。サミット(先進国首脳会議)も日本の首相がいくら参加したくても、経済力が落ち影響力がなくなれば、来てもらう意味がないからお声も掛からなくなるかもしれない。

また、最近、外国人労働者を介護分野などでも広く受け入れるようになってきたが、仮に日本で受け入れ体勢を整えてもいつまで日本に来てくれるかわからない。日本は先進国で東南アジアの国々は開発途上国だから来てくれるだろう、くらいに考えている人もいるかもしれない。

だがそうとも限らない。場所によってはすでに日本の地方中心都市を軽く超えた発展をしているし、平均的な日本人より豊かな富裕層は急増している。さらに隣の中国も早くも高齢化社会に突入し、人口も日本の10倍を超えているのだから介護人材の取り合い合戦も予想される。また、日本の技能実習生の制度の実態も、一部には低賃金のブラック労働もあるという情報も広まりつつある。

私は数年前に転職活動でフィリピンのマニラに行った。この写真は、「ボニファシオ・グローバル・シティー」というエリアのものだ。アメリカ西海岸の街をさらにおしゃれ、かつ近代的にした魅力的なところだ。朝早くに撮影したので人が写っておらずさみしく見えるが、フィリピンという国の先入観をくつがえすような快適さに、日本に戻って来るのが嫌になったほどだ。(長く住んでいる日本の方からは、医療体制の不安などの話を聞いたが)ほかにもマレーシアのクアラルンプールやインドネシアのジャカルタなどの都市も急速に発展している。