俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.12.03 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第47回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 青海に砂州ひとすぢに横たはる 松も代を経る天橋立 松ケ枝に風の鳴る音ききながら 歩いてわたる天橋立 まむかひてほほゑみかはすみ仏の さしのべし手に明日をたのまむ
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『星空の下で』 【第16回】 つむぐ 亡き父は「市民全員の幸福」を切望していた。今の市政を見たらどう思うだろう…。 アパートの部屋に戻ると、さっとシャワーを浴びてベッドに向かった。三十代に入ってからは、疲れがなかなか抜けない。肩こりに眼精疲労。まとまった休みが取れないため、部屋にマッサージチェアまで導入したが、洗濯物置き場と化していた。私は横になると、泥のように眠った。今日は一日、休みをもらえたので、とことん眠るつもりだ。しかし、五時間ぐらいで、着信音に起こされた。携帯電話の画面を見ると、母の顔写真。「何、ど…