四季がある日本は移ろいやすいのだろうか。
行き交う人々の心や街の景色は千変万化で、過去はさらに記憶の彼方へ押しやられてしまっているかのよう。
だが、南の島々には、あの戦争を経ても変わらぬ日本の心が残されていた。
過去と現在、時間の結び目を探しながら、日本古来の清き明き心を見つける旅の歌短歌集を連載でお届けします。
徳川の治世は終はり武士は 身の帯刀を蔵に納めし
*一八六七(慶応三)年、大政奉還。
**一八五三年七月八日(嘉永六年六月三日)、ペリー率いるアメリカ東インド艦隊の四隻の艦船が、江戸湾に来航した。翌一八五四年、再び来航したペリーとの間に日米和親条約が締結され、二百年以上にわたる鎖国が終わることとなった。
天皇をひたすらたすけ国民を 率てゆく政府のいそがれて成る
*一八六八年、明治政府の成立。
熱病に狂ひしさまにつきすすむ 富国強兵にのめりてゆけり
明治以降の日本の歩み
※本記事は、2014年2月刊行の書籍『歌集 忘らえなくに』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
序文
短歌とは、日常のささいな出来事を記すものだろう。いくつかを試みた。
私の関心はもっぱら、日本の自然の美しさ、移ろいにある。小笠原諸島や八重山諸島への旅。身近な四季をりをりの移りゆく姿にそれを見出した。
私の生きながらえた七十年の歳月、その間に世界や日本で起きたさまざまな出来事を、ありのままに記しておきたい思いが、胸の底からふつふつと湧き立ってきた。
これはまさしく自分史の一部を記すことでもある。
二〇一四年一月十五日
松下正樹