俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.08.02 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第1回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 次回の記事へ 最新 旭岳 あふぎて歩む 新雪の 降り敷く路に 人は続けり くろぐろと 山の斜面に 雲走る 霰打ちつぐ 貌伏せて耐ゆ 仰ぎ見る 観音岩に 這ふ蔦も 紅葉しにけり 層雲峡に 仰ぎ見る 観音岩に 這ふ蔦も 紅葉しにけり 層雲峡に
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『雲海のエガミ』 【第16回】 こた 広大な雲海の海に大小様々な島々が浮かぶ「エガミ」中でも大きな島の三国は争っていて… カイユはドキッとして直ぐに手を引っ込めると、男は顔を隠したまま話し始めた。「俺の名前はムスク。エガミから来た」男がそうボソッと言った。カイユはそれを聞いた自分が驚いていなく、不思議に感じた。そしてムスクは呟くように続けた。「今は、雲海のエガミの小説を書いた作者の家に向かっている」カイユは、色々聞きたくて頭の中が混乱した。「あなたがムスク。じゃーあの時、本を盗んだ猫? 教会にも現れた?」ムスクはコ…