【前回の記事を読む】フランス語の口頭試問で、ウクライナ戦争について意見を求められた。さらに試験官は、「トランプ大統領をどう思うか」と聞いてきて……

6.最後に

2021年に準一級を受けようと思った時、それが受かれば十分だと思っていたので、一級が取れた時は嬉しかった。しかし半年も立たぬうちに、そんな喜びは相当薄れた。そして、志望大学へ浪人して入った時の喜びもそうだったな、と思った。

だから、自分が高校生の時から憧れていた、フランス文学専攻の大学院へ入ったのに、すぐ当たり前になってしまって、惜しげもなくあっさり辞めて、T市の土建会社に入ったのかもしれない。いや、もし、大学院に入った時、60を過ぎて私がやっているようにフランス語を極めようとすれば、結構楽しく勉強を続けることができたろう。

しかし当時は「生のフランス語」を聞く手段が極端に少なく、日仏学院かアテネ・フランセの授業を携帯のテープレコーダーに録音し、繰り返し聞き返すくらいしかできなかった。

そして、私は大学に残ることを考えていて、高校生の時、ランボーの詩に感動してフランス文学を選んだのだが、サンボリズムの研究者は昔から数が多く、新たに研究論文のテーマを探しにくいので、バルザックに鞍替えした。

これも研究者が多いが、ランボーの全作品が一冊にまとまるのに対し、「人間喜劇」94編は、その十倍以上のボリュームがあるので、どこかに隙間があるだろうと思った。