【前回の記事を読む】試験中にゾーンに入り、異様な集中力を発揮…だが、試験時間を間違えていた。回収されかけた時、まだ5枠ほど空欄で…
5.そして好きなことをしようと決意した。
ところが、翌年二月、舌に二センチ程の腫瘍が見つかり、舌癌と診断される。これは医師に確認して貰ったわけではないが、フランス語のS音の矯正のため舌を盛り上げた時、上部奥歯に当る部分と腫瘍ができた部分が一致するので、これが原因ではないかと疑っている。
とにかく、毎朝起きると、ベッドの中で30分みっちり、半年間、発音練習を欠かさなかったから。
手術が決まったが、成功しても、フランス語の会話ができるまで回復するか心配だった。尤もその時は、先ず、転移の可能性がなければ、仏検はもうどうでもいいと思ってはいたが。
何とか成功。幸いに、抗がん剤も放射線治療の必要もなしとのこと。するとまた欲が出て、手術の次の日から、早速、リハビリもかねて、毎日三十分の発音練習を再開。ただし、S音練習は省略。そして十日後、退院すると、元のルーチーンを始める。
iPhoneの音声翻訳機能で試してみると、どうにか私のフランス語を認識してくれた。そして、オンライン英会話の先生も皆、手術前と変わらないと言ってくれた。
私はいよいよとなったら、口頭試問の冒頭で、手術をして発音が聞き苦しいのを勘弁してくれ、と断るつもりだったが、その必要はなくなった。発音の心配はなくなったが、フランスの口頭試問の形式に最後まで慣れることができなかった。
二つテーマが出され、一つを選び、3分間、考える時間が与えられ、それを最低3分間で、自分の考えを述べ、質疑応答を含めると9分間で終わる。
私の話が人にウケる時は、「おののき」流の太宰の文章作法ではないが、何かへの自分の感動から始め、話しながら勝手に浮かんでくることをしゃべり続けて行き、最初に考えもしなかった結論で終わるパターンである。
準一級の二回目の時、そのパターンで行ったら、中年のフランス人女性の試験官に(試験官は一名日本人、一名フランス人)大いにウケ、ウクライナ戦争に関するテーマだったが、トランプ大統領に対する意見まで私に求めてきた。民主党寄りのトランプ観を軽く批判すると更にウケ、それで予想通り、合格。