この経験から、私は一級の時もその「おののき」方式でやったのだが、今回は一分ほど話して、これから乗ってくるところで、フランス人の三十代くらいの男性の試験官にきっぱり制せられ、「いつになったらテーマに戻るのですか」と冷たく一言言われ、ガタガタになった。

不合格が判明してから、前者の女性試験官が例外で、後者が標準的だと悟らないわけにはいかなかった。

つまり、冒頭、自分が選んだテーマの現在的な問題点を明らかにし、更に、第一に、第二に、第三にと論点を発展させ、最後に、これまで述べて来たことから私はこう結論する、と簡潔にまとめ、ムッシュ並びにマダム、御拝聴ありがとうごさいます、で終わらねばならないのである。

しかし私は、これがどうしてもできない。それで主だった、ここ数年話題になったテーマを20程選り出して模範文を作り、暗記して、どんな課題が出てもそこへ持っていくことにした。

それでも心配だったが、試験を受けに行く電車の中で、何故か「オーバーツーリズム」の事が頭に浮かんだ。

それは、家を出てくる前に、オンライン英会話の講師による最後の口頭試問練習でも選ばれたテーマであった。そこで改めて、しっかり暗記し直した。

試験会場のアテネ・フランセの廊下で待っていると、中でエクスポゼをやっている受験者が、外から聴いていてもはっきり分かるほど流暢なフランス語で、試験官の笑いが止まらない。

これで私の頭は真っ白になったのだが、渡されたテーマの書かれた紙片を見ると、「安楽死」と「オーバーツーリズム」だった。頭の中に一気に色が蘇った。

2024年8月、準一級を受け始めてから二年十か月、とうとう一級取得。久しぶりに目標を達成した喜びをえた。

次回更新は10月12日(月)、11時の予定です。

 

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