川端康成の自殺、或いは「他人の眼」

私が田舎の文学好きの高校生だった時、川端康成が74歳で自殺した。その二年前、三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊でやはり不可解な割腹自殺を遂げていた。

しかし、三島の件は、例えば、いよいよ高度経済成長が始まり、昭和元禄と言われた、日本人としての魂を失った当時の浮かれた世相に絶望したのだというような説明を聞かされれば、余りに極端だとは思ったが、田舎の高校生にも何となく納得できぬこともなかった。しかし川端の死は、まったくもって理解できなかった。

「伊豆の踊子」を書いた26歳で既に世に知られた職業作家で、53歳で芸術院会員、62歳で文化勲章、69歳で日本人初のノーベル文学賞受賞という名実ともに大作家である川端康成が、何故死ななければならなかったのか。

そして少し調べてみると、この不可解さは、更に深まった。と言うのも、このノーベル賞作家の例は、全く稀有でないことが、次第に分かったからである。

例えば、作家だけに限っても、先ほど言及した三島由紀夫を初め、芥川龍之介、太宰治、ヘミングウェイ、ヴァージニア・ウルフ等々、そしてしかも、(恐らく太宰を除いた?)彼らは全て、皆から尊敬され、経済的にも申し分のない、有名人として成功した後に自殺しているのだった。

次回更新は10月19日(月)、11時の予定です。

 

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