4 ヒーロー

義兄やみんなのおかげでいろいろと葬儀の日程は決まっていった。私が葬儀屋さんとの打ち合わせで唯一覚えているのは祭壇を選ぶ時。

白波が立っているような壮大な祭壇を勧められたが、私は「絶対にやめてください。死んでまで波に揉まれたくないから。パパはもう十分戦ったから、穏やかな祭壇にしてください」と伝えた。

なぜかその白波は嫌だった。パパを穏やかな場所に連れて行ってほしかった。

通夜までは三日間あった。家で私はずっとパパの横にいた。姪っ子が子供たちの世話から何からいろいろやってくれた。

「何か食べて!」とちゃんこ鍋をお椀に入れて持ってきてくれた。

そういえばずっと、何も食べていなかった。ちゃんこ鍋は少ししか食べられなかったけど、温かかった。

パパの髪を少し切って封筒に入れた。どうしてもという時に、もしかしたらこれでパパを感じることができるかもしれないから。姪っ子からのアドバイスである。

髪を切るために、顔を近づけた時、フワッとパパの匂いがした。

「アッ!」と思った。匂いは記憶と強く繋がっているが、想像ができないものである。

なんとなーく覚えている気がしていても、いざその匂いを嗅ぐと、「アッ、これだった!」と思う。

微妙に想像と違う。その「アッ」である。

私はすぐに子供たちを呼び,パパの耳の後ろを指さした。

「パパの匂いする」

パパが生きていれば、「絶対やだ、嗅ぐわけない! やめてよ!」と言われるところだろうが、18歳の息子も12歳の娘も、すぐに嗅いでみている。

「ほんとだ」

しばらく二人はそこにいた。