「これは現場写真ですね。この男が山本学か。顔が大きくて髪の毛は黒で毛量が多い。顎髭を生やしていますね。
黒っぽいスーツを着てブルーのワイシャツにネクタイは締めていない。ここに彼が着ていた服があります。全く同じですね。
確かに右側頭部に射創があるみたいです。髪の毛が血で汚れていますね。周囲の落ち葉も血で汚れている。
司法解剖の結果は……写真がある。わっ、これはグロいな」
「ちょっと、私は見ないからね」
詩は目を背けて言った。
「開頭して脳の損傷まで観察していますね。まず射創は単弾射創ですからおそらく凶器は拳銃でしょうね。
創口周囲に煤暈・刺青暈がありませんから遠射創みたいです。つまり少し距離を開けて発砲しているので射撃距離は推定できません。
射入口は右蝶形骨と頭頂骨のちょうど境目、蝶頭頂縫合のところですね。そして射出口は左頭頂骨で鋸状縫合の少し上。
つまり右側頭葉、中脳、左側頭葉と弾丸が突き抜けていますから即死で間違いありません。
死亡推定時刻は午前1時から3時の間……」
「ちょっと見ただけでそこまで分かるんだ。さすが東大」
詩が感心したように言った。
「いえ、全部報告書に書いてありますから。でも気になることがあるんですよね」
「え、何?」
「一課はおそらく山本は覚醒剤の取引目的でY公園を深夜に訪れて、取引相手と何らかのトラブルを起こし、犯人に銃で撃たれたのではないかと推測していると思うんですが、それなら犯人は何故山本が持っていた覚醒剤を持っていかなかったんでしょうか」
「確かに。相手は覚醒剤が欲しくてそこに来たんだもんね。発砲して気が動転して忘れちゃったとか」
「そんな気の小さい人が射殺なんてするでしょうか。
それともう一つはもう24時間以上経っているのに、まだ弾丸が見つからないことです。拳銃の射程距離は50メートル程度ですから、周囲を捜索すればすぐに見つかるはずだと思うんですけど」
「えーっ、でも林の中でしょ。そんなところで半径50メートルの範囲で小さな弾丸を捜すって大変じゃない?
私なんかこの間公園でコンタクトレンズを落としちゃって探し出すのに1時間以上かかったんだよ。結局口の開いたバッグの中に落ちてたんだけどね」
高井良はしばらく考え込んでから口を開いた。
「やっぱり僕、実況見分してみます」
「は? いやいや、実況見分してから検証なら分かるけど、既に一課が検証してるのに何で教養第3係が実況見分するの? ちょっと君まで天蓋さんみたいなこと言わないでよ」
「明日は外勤しますのでよろしくお願いします」
「ちょっ、ちょっと待ってよ。私1人留守番ってこと? それなら私も行くわよ」
「えっ、大丈夫なんですか?」
「いや、だってこんな部屋に1人じゃ寂しいし、第一することないから詰まらないじゃない。天蓋さんもいないし」
「じゃあ明日の朝、Y公園で待ち合わせしましょう」
「うん」