「倍管」の是非

このような演奏効果上の問題を解決するために、現代のオーケストラは管楽器の数をある程度増強することによって音響のバランスを調整している。

ただ指揮者によってその増強の程度はかなり異なり、次頁の表のように、その指揮者の演奏スタイルやベートーヴェン観を反映しているようである。

幾人かの指揮者のベートーヴェン演奏の録画でチェックしてみたが、概して、遅いテンポで重厚なベートーヴェンを表現するクレンペラーやベームでは、原則として倍管編成である。

クレンペラーの第九のレコードを最初に聴いた時、随所で木管楽器の束がでしゃばってくるのにある違和感を持ったものだが、これが本物だという思いにたどり着くには少し時間がかかった。

一方ハイテンポで颯爽とした表現に仕立てる傾向のあるカラヤンやサヴァリッシュは概して管楽器の増強に消極的である。管楽器非増強派の言い分は二通り考えられる。

一つは、ベートーヴェンはあの時代に可能な四〇人強よりはずっと大きいオーケストラを望んでいたが、それが一九世紀末から二〇世紀にかけて実現したのであり、管弦のバランスも、現代の大編成のような響きがベートーヴェンの望むところであるという考え方。

もう一つは当時の管楽器は今ほど大きな音は出なかったので、その後の弦楽器の増加と現代の管楽器の音量強化がちょうど見合っているので、ことさらに管楽器を増強する必要はないという考え方。

これらの考え方に立つと、管楽器の強いクレンペラーやベームの演奏は、フルトヴェングラーのデモーニッシュなベートーヴェンと同じような意味で、現代におけるベートーヴェンの音楽の新しい魅力の開発発見であるという位置づけになろうか。

 

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