【前回記事を読む】ベートーヴェンの音楽は、美しさを最優先させるべきものではない。日本のオーケストラによる演奏は外れがないが…
第1章 ベートーヴェンに思う
1 第九交響曲に聴く言葉の重み
“Vor GOTT”のティンパニーはディミヌエンドさせるべきか
以上、第九を歌う人々への注文を述べることになったが、もう一つは指揮者諸氏へのお薦めである。
私が銀行のパナマ事務所に勤務していた時、友人が、日本でこんな本が出たよと、岩城宏之の「楽譜の風景」(岩波新書 1983)を送ってくれたことがあった。
指揮者である著者のその実体験を通して、スコアをどう読むかについての事例紹介があって、興味つきず、一気に読んでしまったが、その中で、氏の第九交響曲の解釈について、釈然としないところがあって、その後いろいろ考えさせられた。
それを確かめるために、いくつかのレコードを買い込んだり、コンサートに出かけたりもしたので、その概要をご披露したい。
問題の箇所は第四楽章、声楽が入って、“Freude”の歌が重唱と合唱で交互に歌われ、最後に合唱がフォルティッシモで“Und der Cherub steht vor Gott, vor Gott, VOR GOTT”「ケループ(という天使)が神の前に立つ、神の前に、神の前に」と歌い上げ、最後の“VOR GOTT”に大きくフェルマータをかけて頂点を築くところである。(330小節目)。【楽譜1】