それでも今日の規模のものと比べると、弦楽器の比率が小さい。

一方今日のような総勢七〇人規模で演奏すると、P27の表のように十分に豊潤な弦楽群となり、二〇〇〇人規模の現代のホールでも豊かな音で聴くことができる。

ただその豊かな弦楽器群がベートーヴェンの考えていた音のバランスからかえって乖離する面もあるということに注目したい。

たとえば、次頁の第七交響曲の終楽章の36小節~39小節と40小節~43小節のフレーズのそれぞれの最後の三拍は初回がイ長調だが((【楽譜2】のA印)、二回目は嬰へ短調へ転調する(【楽譜2】のB印)。

この嬰ヘ短調の主和音と属和音を強調するために木管楽器が束になって吹きつけるところなどは、四五人くらいの編成のウィーン・アカデミー・オーケストラの録音が威力を発揮する。

前に引用した第九交響曲の“VORGOTT”の例も含めて、ベートーヴェンはあるフレーズの最後の音群を転調させることによって、音楽の立体的スケール感を強調するのがお得意であり、こうした転調効果も小編成の方が迫力を発揮するようだ。

【推薦CD】・ベートーヴェン交響曲第七番イ長調(マルティン・ハーゼルベック指揮、ウィーン・アカデミー管弦楽団)