【前回の記事を読む】「左手は行儀が悪い」昔は左利きというだけで「しつけ不足」と親まで責められ、無理やり右利きに矯正させられた…だが近年、その弊害が明らかに…
第三景 歩夢
こんな話をして心を解きほぐすことに努めた。どの程度ほぐれたかどうかはわからない。俺がそうだったように、こういう話はきっと同級生から言われた方が心に響くものだからだ。
でも、同じような境遇だった俺の話は、決して説得力がないものではない。どれくらいお腹にストンと落ちてくれたかな? 勉強だけじゃなくて、こうした会話で視野を広げてあげるのもいいことだよな? 自問自答しながら帰途についた。
次の授業。英語・数学の中一の総まとめをした。なかなか感触が良い。
お母さんが言ってたこと、『やればできる子』は盛った話ではなかったようだ。
「この次の授業は、入試によく出る中一範囲の問題をテストするよ」
「先生、それは制限時間あるの?」
「そうだな入試に出そうな問題だから、制限時間は設けるよ」
歩夢の顔が少し曇る。
「大丈夫だよ。これまでの勉強の範囲なんだから。それに途中で終わったとしても、別にペナルティがあるわけでもないし」
歩夢はうーんと言いながら半ば諦めの表情だ。
「人に見られてるのがプレッシャーなんだ」
「じゃあ、制限時間は計るけど、俺は部屋の外に出とくよ。そしたら少しは気が楽だろ?」
「うん。そうして」